終戦のローレライ 上(福井晴敏)の書評

日本地図

敗戦濃厚だった大日本帝国が、少しでも有利な条件で終戦を迎えられるように、かすかな期待を寄せていたのが秘密兵器「ローレライ」です。この話はSF小説であり現実にある話ではありませんが、多くの日本人に色々と考えさせる小説です。それでは、この「終戦のローレライ 上」のストーリーや見所を紹介しましょう。(ネタバレ注意)

「終戦のローレライ 上」のストーリー

潜水艦が戦う水中

日本近海の水中で、ドイツ海軍と米国海軍が激しい激闘を繰り広げる所から、この物語は始まります。ドイツがある秘密兵器「ローレライ」を積んで日本に向かっている所を米国海軍の潜水艦が執拗に追いかけ回してくるのです。

戦没扱いされたボーンフィッシュ(起)

戦没扱いされた潜水艦

米国の潜水艦「ボーンフィッシュ」は大日本帝国軍に袋叩きにされて、米軍から戦没とされてしまいました。しかし、ボーンフィッシュはかろうじて沈没をまぬがれて、現在もドイツ海軍をしつように追いかけ回してきます。ドイツ海軍は、そのような潜水艦を「しつこいアメリカ人」と罵り、ボーンフィッシュではローレライを積んだドイツ海軍を「ナチの亡霊」と罵る日々だったのです。

このボーンフィッシュは、パールハーバーからタンイやスケートと共に出航してきましたが、その目的は大日本帝国を兵糧攻めにする事にありました。ナチスドイツやイタリアはすでに降伏をしていたので、米国の敵は大日本帝国だけになっていたので、日本近海へ繰り出して兵糧攻めに着手する事が可能だった訳です。

シーゴーストの存在(承)

シーゴースとの目

米国に追われている潜水艦は別名「シーゴースト」と呼ばれており、ボーンフィッシュが執拗に追いかけ回す獲物でした。この獲物は、当初国籍不明の潜水艦で、どの国の潜水艦なのか?米軍の上層部は疑念を抱いていました。そしてボーンフィッシュは、ついにシーゴーストに追いついて、同じ米軍潜水艦である「トリガー」と協力して挟み撃ちにする作戦を実行します。所が、シーゴーストは意表をついて、ボーンフィッシュの真下から浮上して、魚雷を発射してきました。米軍は大急ぎで魚雷を交わそうと懸命に行動します。シーゴーストは、まるで水中に存在する潜水艦の位置を完全に把握するかのような行動を取り危機を脱したのです。

今のような正確なレーダーがない時代ではありえない行動に、米軍は「シーゴーストには目が付いているのか?」そのような恐れを抱かせたのです。しかし、それでもボーンフィッシュはシーゴーストを追いかけ続けて、ついにシーゴーストは逃避行の途中で浸水が発生する事になりました。ここでシーゴーストの指揮官「ヤンニグス」はローレライと大きく関係する「ナーバル」を破棄しようとします。しかし、フリッツという軍人はローレライがあるからこそ、大日本帝国が迎えてくれるのだろうとナーバルの破棄に反対します。しかしナーバルはローレライごと破棄されて、シーゴーストは大日本帝国へ到着する事になったのです。

大日本帝国の若者達(転)

広島県から見える瀬戸内海

その頃、大日本帝国では、若者の「折笠征人」や「清永喜久雄」達が軍部の極秘任務の為に広島へ向かっていました。その広島には「海軍潜水学校」があり、そこでは「絹見真一」が、潜水艦について生徒達へ教えていました。所が、ある日になって絹見真一は軍のすすめによって「教育参考館」で、ある人物に会う事になりました。そこで「浅倉良橘」大佐と面会して「フリッツ」という軍人を紹介されたのです。このフリッツは日本人ですがナチスドイツの軍人として日本へやってきた人物でした。

浅倉が望んだのは「あるべき終戦」に戻す事であり、そのためにはローレライという兵器を回収する必要がある事を教えてくれたのです。絹見はローレライについて詳しく教えてもらえなかったのですが、そのローレライを回収する為に、絹見は艦長としてフリッツと共にドイツから回収した潜水艦「伊507」に乗り込む事になりました。そして征人や清水も同じように、伊507に乗り込む事になったのです。

伊507に集められた軍人は寄せ集めのような人間が多かったので、絹見は軍人達を訓練しながらローレライがいる位置まで航海の旅に出る事になります。

ローレライ奪取(結)

日米の国旗画像

伊507が、ローレライ奪還に向かっていた時に、同じように米軍もローレライを探していました。しかし、米軍は伊507が近づいている事を察知して、伊507についていけば、ローレライの場所も分かるはずと考えて接近してきます。そしてローレライ回収は征人にゆだねられて、征人は回収作業へ向こう事になりました。征人は、水中にもぐっていきナーバルを発見して、ナーバルの中へ入るとある少女に出会います。この少女は「パウラ」という名前で、フリッツの妹にして、このパウラこそローレライという兵器だったのです。

征人はパウラを伊507へ連れて行きますが、この少女はドイツで何度も実験を重ねられて、敵の位置などを把握出来る能力を持っていました。ただし欠点があり、敵の潜水艦を1隻沈めるだけで相当の精神ダメージを受けてしまうので、1隻沈めた後はしばらく他の潜水艦の位置を確認出来るのは不可能だったのです。

運悪く米軍の潜水艦「トリガー」と「スヌーク」が伊507に襲いかかってきました。ローレライは、1隻沈めたら、後は相手の位置が分からなくなるので、絹見は思いがけない作戦を実行する事にします。まずトリガーに急接近して、伊507が牽引してきた「海龍」という特殊潜水艦がトリガーに向かって激突させます。まだ沈没した訳ではなかったので、ローレライの千里眼の能力は生きた状態でした。絹見はローレライの能力がまだ生き残れるように、わざとトリガーを沈没しない程度のダメージにとどめました。

伊507は、そのままスヌークに近づいていき、魚雷を発射してスヌークを沈める事に成功します。ここでパウラは精神的ダメージを受けて、ローレライの能力は一時的に使用出来ない状態になりました。そこへトリガーが最後の勝負をかけてきました。伊507は、砲弾を発射してトリガーにやっと止めを刺したのです。その頃、アメリカでは秘密の実験を行っていました。その実験こそ、広島へ投下される原子爆弾である事を大日本帝国の軍人達はまだ知らなかったのです。

「終戦のローレライ 上」の見所

ローレライで展開される人間ドラマ

終戦のローレライは450ページ以上もある小説なので、その内容も膨大です。そのため人間関係は極力抑えてストーリー重視の書評を投稿しました。この小説の見所は、ストーリーだけでなく数多くの人間関係のドラマでもあります。

フリッツがローラレライ奪還に執念を燃やしたのも、兵器奪還というよりは妹「パウラ」の救出のためでした。そして征人はパウラに特別な感情を抱いておりパウラにダメージを与える作戦に反対したので、絹見もパウラにダメージを出来るだけ与えない作戦を実行する事にしました。このような人間ドラマが展開されていきながら、大日本帝国がどのような終戦を迎えるのか?続編「終戦のローレライ 下」の小説で、どのようなストーリーが展開されるのか凄く楽しみな所ですね。

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