瀬戸内海の子供ら(第2回芥川賞 候補)の書評

瀬戸内海の風景

第2回芥川賞(1935年下半期)の候補作『瀬戸内海の子供ら』は、小山祐士先生の小説で、美しい港町で1つの家族が揺れ動く物語が展開されていきます。この小説を知らない方のために、このストーリーや見所などを詳しく紹介します。ネタはバラさないので安心してお読みになって下さい。

「瀬戸内海の子供ら」のストーリー

孫の手

瀬戸内海のある港町には、元子と正彦という夫婦がいました。この元子には兄弟がいて、その兄弟は「亮一」と「振次郎」がいるのですが、この二人が元子や両親を悩ませていくのです。

悩ませると言っても、犯罪をするという訳でもなく、いつまでたっても結婚しないで孫の顔を見せない……まぁ現代でもよくある話ですね。さらに、元子の父親はある土地を持っていましたが、この土地の権利を巡って家族中がいがみあう事になっていくのです。

亮一は土地の権利をめぐって両親に喰ってかかり、振次郎は良い相手を見つくれたのかなと思いながら、意外な展開になっていき母親や元子は気をもむ事になります。しかし、同じ男である正彦はそんな兄弟達の気持ちに理解を示します。この複雑な人間関係がこの小さな港町で繰り広げられるのが「瀬戸内海の子供ら」なのです。

「瀬戸内海の子供ら」が伝えてくれる事

田舎の風景

瀬戸内海の子供らの時代背景は、日露戦争が終わった後です。つまり、戦時中という事もあって、現代とは大きく異なる時代になります。しかし、そのような時代でも、母親は常に子供達の心配をする事は変わりがないのです。

もちろん小山祐士先生が伝えたかったのはそういう事ではないのでしょう。数十年後の未来のことを考えて書いたとは思えません。それよりも美しい景色が広がる港町で、思うようにいかない人間関係を描くことによって、親の苦しい胸中を伝えたかったのでしょう。

よく考えてみれば、地方都市に住んでいる方にも同じことが言えると思います。親にしてみれば、これだけ良い景色で恵まれた所と思っても、子供はそう思っていないことがあります。こんな田舎町ではなく東京や横浜に住みたかったと思うことがあるでしょう。それとは逆で東京や横浜という大都市に住んでいる子供が、実は自然が豊かな地方都市に住んでみたいと思う子供もいるでしょう。瀬戸内海の子供らは、親子が思うようにいかない難しさや、親の苦しい胸中を今に伝えてくれます。

「瀬戸内海の子供ら」で考えさせられる事

お金に関わる悩み

親が子供に対して悩んでいるように、子供も親に対して悩む事があります。それは別に好きで独身をしている訳ではないという事です。誰もが好きなタイプの異性と付き合って結婚出来る訳でもないし、親のために結婚する訳でもないと思う気持ちが子供にはあります。

さらに土地の権利を巡っては、何も親の遺産をかすめ取ろうとかそういう話ではなくて、早いうちに土地を売らなければ重荷となって苦しめられるという考えが亮一にはあったのです。土地と言っても儲かる事よりも、その土地を維持するためにお金をかけて重荷になるケースは現代でもよくある話です。

しかし、その土地は亮一の父親にとって重要なものですから、簡単に手放せるものかという思いが母親にはありました。そのため、家族中でいがみ合いを起こしていく事になるのです。

「瀬戸内海の子供ら」の見所

昔と現代に違いがないもの

この小説は、昭和前期に発売されたものですから、現代の小説とは大きく異なる展開で繰り広げられます。それは何かと言えば、最初は何を伝えたいのかさっぱり分からないという事があったのです。前半部分は家族で世間話がえんえんと続いてしまい、昔の小説とはこういう展開なのかと思ってしまうほどでした。

数多くの小説は、冒頭で読者に興味を持ってもらうために、出来るだけ興味をひきつける内容を最初に描くものが多いです。しかし、この小説は、最初のほうはそれほど興味をひきつける内容は書かれていないのですが、途中から少しずつストーリーに変化が生まれて生き、後半部分は急展開を見せるのです。

最初は少し退屈だなと考えていたのに、途中から急展開するので、そのギャップがこの小説の最大の見所と言えます。

「瀬戸内海の子供ら」のまとめ

瀬戸内海の子供らのまとめを説明する女性

第2回芥川賞では、受賞作が1つもなくて『瀬戸内海の子供ら』は候補に選ばれており、もう一歩という所だった作品でした。この小説では親子関係の葛藤や、昔と今も変わらないものがある事など読みごたえの多い物語ではありました。ただし、女性が男性に苦しめられるシーンが後半部分で出てしまい、そこは好みの分かれるところになります。

私はそういうシーンがあまり好きではないので、少し後味の悪さが残ってしまいました。感動出来る部分はありましたし、考えさせられる所は色々とあったのですが、男性が力づくで女性を苦しめるシーンだけはもう少し抑えても良かったのではないかなと感じます。しかし、作者がこういった行為は絶対にダメだという事を伝えたいのだけは読んでいて、よく伝わってくるので、こういった描写は止むを得ないかなとも思いました。

そして、この小説は現在では古書でしか手に入らないので、Amazonや楽天では購入する事が難しいので注意して下さい(Kindleでは紹介する程度のものしか表示されていません)。

それと、今まで小説やDVDを案内する記事ではストーリーを細かく書いてきましたが、それでは読者の楽しみを奪ってしまうなと以前から悩んでいました。そこで、今回から極力読者の楽しみを奪わないように紹介しょうと思いましたので、これからはストーリーは簡潔に紹介しながら、私個人の意見を述べさせてもらいます。

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