人生の阿呆(第4回直木賞 受賞)の書評

カシウの画像

昭和11年下半期の第4回直木賞の受賞作『人生の阿呆』は、木々高太郎先生の小説で、裕福な家で生れ育った良吉がある事件に巻き込まれていく事によって、たくましく成長していく物語です。そこで、この小説を知らない方のために、あまりネタをバラさないようにストーリーや見所などを紹介するので、参考にしてみて下さい(上のはイメージ画像)。

『人生の阿呆』のストーリー

ストライキに疲れたサラリーマン

比良家では、家の主人である良三が、母に向かって、自分の息子の良吉について文句を言っていました。なぜなら、放蕩息子ほうとうむすこの良吉が、敏やを妊娠させた疑いがあったからです。祖母は孫の良吉をいつもかばってしまうので、良三や、その妻の安子はいつも苛立いらだってしまう毎日を送っていました。

良吉が海外留学(起)

良三は『カシウ』という菓子と『自動販売機』で巨万の富を得て、傾きかけた比良家を建て直した男でした。そのため、自分に絶対の自身を持っていましたが、祖母にも気を使って、良吉の好きなようにやらせていました。そのため、良吉が社員のストライキに肩入れをしても文句を言いませんでした。

しかし、自立もしていない男が女性を妊娠させた事に、良三は激怒して、良吉を問い詰める事にしました。所が、良吉は「お父さん、それは冤罪えんざいですよ」と否定します。しかし良三は、息子の言葉に耳を傾けないで、外国へ行ってきて修行してこいと言い放ちます。

良吉は、冤罪とは思いましたが、外国へ行ってみたいと思っていたので、もっけの幸いと思って、外国へ留学する事にしたのです。

カシウ殺人事件(承)

11月4日になり、いよいよ良吉は汽車に乗って、外国へ向かう事にしました。そして、11月5日に、落合警部は森田警部に18歳の娘が毒殺された事件が解決できなくて、困っていると相談していました。その娘は、今時としては珍しく『ストリキリーニ』という物で、命を奪われたようなのです。

その時です、警察署に電話が鳴ったのは。森田警部は受話器を取ったら、再び毒殺事件が起きてしまった事を知らされます。これは連続事件かもしれないと思ったのか?森田警部はあわてて「小山田先生に連絡をしてくれ」と言って、仕度を始めました。

2回目の事件の被害者は60歳ぐらいの老婆で、そこには何と、カシムの小包があったのです。それが新聞記事に載ってしまって、警察はカシウが事件と関係があるように喋った事まで書かれていました。

墓穴を掘った良三(転)

会社で製造しているカシウが事件に関わっていると書かれてしまえば、会社の信用問題に関わります。すぐさま、良三が経営している『比良製菓会社』の浜崎主任が、警察まで抗議に来たのです。そこで、森田警部は、会社でストックされているカシウにストリキリーニが混ざっていないか調べさせて欲しいと打診しました。

会社の疑いを晴らすために、浜崎主任は了承します。そして、会社へ訪問した森田警部ですが、保険状態には注意しており、社長のかんに障るような事をした社員を解雇したぐらいの事しか分かりませんでした。そこで森田警部は、比良家も調べさせて欲しいとお願いしてみる事にしたのです。

そうしたら、良三は「それで何もなかったら、新聞で訂正記事を書いて欲しい」とお願いしたのです。そこで森田警部や小山田先生たちは家を調べたが、何も出てこないので、良三たちは勝ち誇った表情を浮かべます。所が、比良家の小屋から遺体が発見されてしまったのです。これには良三も動揺してしまいました。

犯人は良吉?(結)

小屋にあった遺体は、無産党の弁護士の高岡日出夫という人物でした。実は、高岡と良吉は面識があって、その親交は深かかったのです。そこで森田警部は、良吉を日本へ帰国させる事にしたのです。その頃、良吉は以前まで付き合っていた達子と、モスクワで会っていました。

しかし、時計の針は戻せなくて、達子はすでに結婚していたので、どうする事もできずに自ら命を絶ってしまったのです。遺書には「人生の阿呆にはならぬよう、気を付けて下さい」と書かれていました。良吉は日本へ帰国するように言われていたので、達子の意思を無駄にしないために帰国の途につきました。

日本へ帰国した良吉でしたが、日野理学士と坂本薬学士がカシウのストックを調べようとしたら、今度は坂本薬学士が亡くなってしまいました。祖母や良三たちが心配する中で、良吉は無実である事を訴えます。はたして、本当に犯人は良吉ではないのでしょうか?

『人生の阿呆』から伝わる事

モスクワの夜景

良吉は、相手から疑われた時に否定はしますが、途中でどうにでもなれという態度を取る所があります。さらに良吉は強い意思を持っていて、ストライキにのめり込むようになって、弁護士の高岡と接触していく事になるのです。

しかし、その事が父親の会社を傾かせる事になってしまい、多くの者たちを不幸のどん底へ突き落とす事になります。この事から、自分の信じる道へ突き進むためには、多くの犠牲を払う事が、時には必要である事が分かります。

そのため、自分の夢に突き進む時は、多くの事を犠牲にする覚悟を持たなければいけない事を『人生の阿呆』は教えてくれています。

『人生の阿呆』の見所

警察が敬礼

私は、人生の阿呆を読み始めた時は「ようするに、放蕩息子の我がままにスポットを当てたヒューマンドラマか」と思っていたら、推理小説になっていくので驚きました。この小説では、比良製菓会社のカシウが事件に関わっている事を疑う警察と、事件とは関係がないと主張する良三たちのせめぎ合いが大きな見所になっています。

良吉や祖母などの人間関係も大きな見所ではありますが、この先、どのような展開が待っているのか分からない事件の経緯を読んでいくのは、面白みがありました。

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